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錦繍

錦繍宮本 輝 / 新潮社/ISBN : 4101307024/スコア選択:

これは、何度も読んだ本で、
石川淳の「白描」と並んで、
わたしの心に、深く残っている物語だ。

幸せだったと、信じていた筈の夫婦に、
ある日・・・「事件」は、起こる。

十数年後、ある行楽園の中で、
偶然・・・元夫婦は再会し、
元妻からの連絡で往復書簡が始まり、
過去が明らかになってゆく。



最初に宮本輝の作品を読んだ切欠は、学生時代お世話になった現国の先生から、職員室で、小説に関する話を伺っていて、「宮元輝の表現はデリケートだから、多分、君も気にいると思うからぜひ、読んでみるといいよ」と薦めていただいて・・・最初に読んだのが確か、「道頓堀川」だった。このお話も切なかったけれど、そのかなり後に読んだこの「錦繍」は、読む度に泣けるのだ。゜
*;-;)

夫婦とはいえ・・・若さゆえの過ち、そして…当時は当然のように、それを許せなかった妻が、十数年の歳月を経て、元夫に自ら手紙を出し、そして、元夫の現在の妻が・・・その手紙の内容の一部始終を知った後に、泣きながら、言う。

「うち、あんたの奥さんやった人を好きや」

宮本輝の作品に登場する女性は・・・一見、脆い様でいて・・・芯の強い、気丈な、懐の深い女性像が多く、読んでいて胸が熱くなることが多い。
が、これを最初に読んだ…二十歳そこそこの頃は、正直…この心理が、理解しきれず、なぜ…彼女は、許せるのだろうか?などと思ったり、自分なら、どうするだろう・・・など、何度も感情移入して…個人的に、この物語は・・・「許し」の話と思っていた。

今、読むと・・・又、かなり・・・来るものがある。
*///)

しかし、淡々とした文体の中にも、何度も怒り、絶望し、憔悴しながらも・・・乗り越えて来たのであろう、昔はパートナーであった、男女の心の動きが、今、この歳で読むせいもあるのか、あまりに切なくて、深い+。゜
by o-bleneri | 2005-09-04 22:22 | 日記


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